現在位置:ホーム > 医療関係者の方へ > 薬剤師の皆さまへ > Alcon EYE Vol.2
Alcon EYE Vol.2
症例から読み解く薬剤の処方意図
「アレルギー性角結膜疾患」
監修:海老原伸行(順天堂大学医学部眼科学 先任准教授)
(1) 花粉性結膜炎

処方せん内容の理解
患者は24歳女性で、眼の痒み・充血・異物感を主訴に来院した。患者は毎年スギ花粉の飛散シーズンになると同様の症状を呈し、血液検査にてスギ花粉抗原に対するlgE値が高いことが判明している。来院した週はスギ花粉飛散量が極期に至っていた。他覚所見は、瞼結膜の充血・浮腫・濾胞を認めた。以上より花粉性結膜炎と診断した。痒みを主訴に来院した花粉性結膜炎患者に対する初回時処方は、マスト細胞膜安定化薬(インタール)かヒスタミンH1受容体拮抗薬(リボスチン)、
または一剤でこれらの2つの作用をもつ点眼液(パタノール)を処方する。
一般にヒスタミンH1受容体拮抗薬のほうが痒みに対して即効性がある(処方例 1-1、2-1、3-1)。

初回来院時の処方で、痒みをはじめとする自覚症状が改善しないときは、低力価のステロイド点眼(フルメトロン)を追加する(処方例1-2)。
また、マスト細胞膜安定化薬点眼またはヒスタミンH1受容体拮抗薬点眼の一方のみでは症状改善を認めない時は、両方を処方する(処方例2-2)。
ステロイド点眼には眼圧上昇・易感染・創傷治癒の遅延などの副作用を伴うので、必ず再診することを患者に伝える。一般に花粉性結膜炎に高力価ステロイド点眼(0.1%リンデロン点眼)を処方することはない。


花粉飛散量が極期に達すると、眼瞼皮膚の痒みを訴える患者もいる。花粉性眼瞼炎である。点眼のみでは良くならず、内服と軟膏の処方が必要になる。
内服薬は第2世代抗ヒスタミン薬を用いる。抗ヒスタミン薬の内服を処方する際は、患者の生活行動をよく聞き、運転・重大な仕事・重大な仕事・受験時などは避けるようにする。
眼瞼局所への軟膏の塗付は、軽度なら眼科用白色ワセリン軟膏であるプロペト軟膏(処方例 1-3)、それでも良くならなければ、眼科用ステロイド軟膏であるプレドニン眼軟膏を処方する。使用は痒みの強いときのみとし、漫然と長期間使用することは避ける。ネオメドロール眼軟膏は接触眼瞼炎を生じやすい。最近は、0.03%のプロトピック軟膏(小児用)を処方する例もある(処方例 1-4)。プロトピックは目に入らないように指導する。

処方後、一度は目の痒み・眼瞼皮膚の痒みとも改善したのに、数週間後に眼瞼結膜の充血・濾胞、眼瞼皮膚の炎症を認めることがある。点眼薬による薬剤アレルギー、または接触眼瞼炎である。即座に点眼薬・軟膏の全てを中止し、皮膚科にてパッチテストを施行し、原因薬剤を同定する。また、抗アレルギー薬点眼は比較的長期に使用することがあり、薬剤性角膜上皮障害を起こす場合がある。点眼薬中の防腐剤(ベンザルコニウム塩化物)が原因であることが多く、点眼を継続する場合は、防腐剤を含有しない点眼(インタールUD、ザジテンUD)に変更する(処方例 1-5)。
(2) 春季カタル

処方せん内容の理解
患者は8歳の男児。以前より春季カタルの診断で近医より抗アレルギー薬点眼を処方されていた。最近、視力低下・充血・眼脂・差明を訴えたので来院した。診察すると、春季カタルが悪化し、角膜上皮障害を起こしていた。春季カタルは重症のアレルギー性結膜疾患で、抗アレルギー薬点眼のみではコントロールできないことが多い。以前はステロイド点眼が処方(処方例 1-1)されていたが、最近、免疫抑制薬点眼のパピロックミニ(0.1%水性シクロスポリン)点眼が処方できるようになった(処方例 2-1)。シクロスポリンは、
T細胞特異的免疫抑制作用を有し、ステロイド点眼のもつ眼圧上昇作用や創傷治癒の遅延作用はない。

重症の春季カタルで抗アレルギー薬点眼と0.1%フルオロメトロン点眼、またはパピロックミニ点眼との併用では有効でないときに、0.1%リンデロン点眼(処方例 1-2)、 またはタリムス点眼を点眼する。また、処方例1-1にパピロックミニ点眼を併用することにより、ステロイド点眼よりの離脱又は低力価ステロイド点眼への変更(0.1%リンデロン点眼から0.1%フルメトロン点眼)が可能である。
(3) 用法・用量、規格のチェック
現在わが国で処方できる後発品以外の抗アレルギー薬点眼は9種類ある(表1)。
大きくマスト細胞膜安定化薬とヒスタミンH1受容体拮抗薬に区別できる。これら2つの作用をもつ点眼としてはパタノール、ザジテンがある。リザベンは抗TGF-β作用やコラーゲン産生抑制作用をもち、結膜の増殖性変化に効果がある。すべて5mlで、アレギサール以外は1日4回点眼が原則である。アレギサールは1日2回の点眼で、コンタクトレンズ装用前後の点眼が可能であり便利である。また、防腐剤を含まない1回使いきりの点眼薬にはインタールUD、サジテンUDがあり、ベンザルコニウム塩化物過敏症の患者に適応がある。また、点眼薬は酸性・中性・アルカリ性に区別することができる。一般に中性のものは眼刺激感が少ない。また、性状としてリボスチンは懸濁している。パピロックミニは防腐剤を含まない1回使いきりの点眼で、42本で1箱になっている。
表1 抗アレルギー点眼
| 作業機序 | 現在使用できるおもな薬剤 | 特徴 |
|---|---|---|
| マスト細胞の膜安定化 (メディエーター遊離抑制作用) |
クロモグリク酸ナトリウム (インタール) |
|
| ペミロラストカリウム (ペミラストン,アレギサール) |
||
| アンレキサノクス (エリックス) |
||
| アシタザノラスト水和物 (ゼペリン) |
||
| イブジラスト (アイビナール,ケタス) |
好酸球遊走阻止 | |
| レボカバスチン塩酸塩 (リボスチン) |
抗ヒスタミン作用 | |
| ケトチフェンフマル酸塩液 (ザジテン) |
||
| オロパタジン塩酸塩 (パタノール) |
||
| トラニラスト (リザベン) |
増殖性変化の抑制 |
(4) 点眼薬の禁忌
原料に過敏症がある人、また含有防腐剤(ベンザルコニウム塩化物が多い)に過敏症がある人は、他の薬剤または防腐剤なしの点眼を使用する。ステロイド点眼(0.1%リンデロン)には眼圧上昇作用があるため、ステロイドレスポンダー症例には処方しない。特に春季カタル患者には年少者が多く、眼圧上昇は必発である。パピロックミニ、タクリムスとも強い免疫抑制作用をもつ。ゆえに、角結膜感染症を伴う症例や再発性ヘルペス角膜炎の症例には処方はひかえる。
(5) 薬剤師に期待される服薬指導
一般に花粉性結膜炎患者は痒みの症状が強いので、点眼のコンプライアンスは良い。近年コンタクトレンズ(CL)装用者の急増により、CL装用者の花粉性結膜炎患者も増加している。CL装用時の点眼は、1日交換・2週間交換の使い捨てソフトCLならば良いとしている。使い捨てでないソフトCLやハードCL装用時の点眼は禁止している。また、点眼薬は懸濁していないもの、中性のものが良い。また、点眼しても症状が悪化する場合や眼瞼炎を認める場合、薬剤性の原因を考える。
春季カタルは寛解・増悪をくり返す疾患なので、症状の改善・悪化に一喜一憂しないことが大切である。また、患者の多くが年少者であるため、点眼指導が重要である。小学校の高学年までは、家庭では家族に、学校では保健師に点眼してもらうよう指導する。また、小学校高学年以上でも子供の場合は、症状があっても点眼のコンプライアンスが悪い。そのため自分で点眼表を作成させ、点眼したら表に○をつけていくようにさせるとよい。医師・薬剤師・患者・両親・学校の先生または保健師のチームワークが必要である。
注意すべき局所副作用
A. 抗アレルギー薬点眼
● 点眼アレルギー
● 接触眼瞼炎
● 薬剤性角膜上皮障害
B. ステロイド点眼
● 眼圧上昇
C. 免疫抑制薬点眼・ステロイド点眼
● 細菌性角膜潰瘍
● ヘルペス性角膜炎
関連リンク








