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Alcon EYE Vol.1
症例から読み解く薬剤の処方意図「緑内障」
監修:安田典子(東京警察病院眼科部長)
(1) 処方せん内容の理解

患者は58歳男性で、会社の健診で「視神経乳頭陥凹拡大」を指摘され、眼科を受診した。検査の結果「正常眼圧緑内障」と診断され、上記点眼薬を処方された(処方例1-1、2-1)。
「正常眼圧緑内障」は日本においては緑内障全体の7割を占め、点眼薬が治療の柱となるので処方せんの意図を理解することが薬剤師にとって重要である。
「正常眼圧緑内障」はプロスタグランジン関連薬(トラボプロスト、ラタノプロスト)が第一選択薬として処方される場合が多く、上記処方のように意図的に片眼点眼でその眼圧下降効果を確認することがある。
処方量(○mL、○本)、両眼か片眼か、点眼回数、点眼時刻(朝か夜か)を確認する。

図1 眼圧下降治療:薬物治療の導入[原発開放隅角緑内障(広義)](日本緑内障学会:緑内障診療ガイドライン第2版より)
片眼投与で眼圧下降が確認できると両眼投与となる。また、医師はそれぞれの患者の進行度にあわせて「目標眼圧」を設定し治療をしている。目標眼圧はいろいろな因子によって決定され、治療の経過中にもその数値は変更されることがある(図1)。

処方例1-2、2-2の処方せんの場合、プロスタグランジン関連薬の単剤では効果不十分と判断され、β遮断薬が追加された。β遮断薬は日中に効果が高いので、朝点眼が指定される。点眼時刻の確認は大切なポイントである。β遮断薬は、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、心不全、洞性徐脈、房室ブロックのある人には禁忌なので、既往歴や内科投与薬から該当する患者があれば、眼科医に疑義照会する。



処方例3、4の処方せんは第二選択薬として炭酸脱水酵素阻害薬が追加された。炭酸脱水酵素阻害薬はβ遮断薬と違って、心臓病や気管支喘息を合併した患者にも用いることができる。血圧低下や脈拍低下をきたさないので、この処方せんは高齢者にも安全な組み合わせである。また,炭酸脱水酵素阻害薬はβ遮断薬より夜間の眼圧下降に優れており、「正常眼圧緑内障」では,この組み合わせの処方が増えている。緑内障点眼薬の1日2回とは12時間毎で、1日3回とは8時間毎に近づけた時刻に点眼することも患者に説明する。また,懸濁性点眼薬は点眼後霧視が生じるため、運転の直前には点眼しないよう患者に指導する。
緑内障では作用機序の異なる薬を併用するので、処方例5の組み合わせがfull medicationに近い。作用機序を同一にする点眼薬が重複していないかチェックする(表1)。
表1 点眼薬の作用機序
| 房水の流出促進 | ||
|---|---|---|
| ぶどう膜強膜流出路房水流出の増大 | ||
| 分類 | 一般名 | 商品名 |
| プロスタグランジン関連薬 | トラボプロスト | トラバタンズ |
| ラタノプロスト | キサラタン | |
| ウノプロストン | レスキュラ | |
| α1受容体選択性遮断薬 | ブナゾシン | デタントール |
| 線維柱帯流出路房水流出の増大 | ||
| 交感神経刺激薬 | ジピベフリン | ピバレフリン |
| 副交感神経刺激薬 | ピロカルピン | サンピロ |
| 房水産生抑制 | ||
| 交感神経遮断薬 | ||
| β遮断薬 | ベタキソロール | ベトプティック ベトプティックエス |
| チモロール | チモプトール リズモン |
|
| カルテオロール | ミケラン,ミケランLA | |
| レボブノロール | ミロル | |
| αβ遮断薬 | ニプラジロール | ハイパジール |
| 炭酸脱水酵素阻害薬 | ||
| − | ドルゾラミド | トルソプト |
| − | ブリンゾラミド | エイゾプト |
(2) 用法・用量、規格のチェック
処方せんの記載が「○mL」か「○本」かに気をつける。
点眼薬の内容量の多くは5mLだが,トラバタンズ,キサラタンなど1日1回点眼の薬は2.5mLであるので特に気をつける。
1日の点眼回数を確認する(表2)。
次回来局日に,使用用量が適当か確認する。
同じ製品名でも濃度の違いがあるものは注意する。チモプトール0.25%,0.5%,ミケラン1%,2%,トルソプト0.5%,1%,サンピロ0.5%,1%,2%,3%,4%などである。
表2 1日の点眼回数
| 1日1回 | ||
|---|---|---|
| 分類 | 一般名 | 商品名 |
| プロスタグランジン関連薬 | トラボプロスト | トラバタンズ |
| ラタノプロスト | キサラタン | |
| β遮断薬 | チモロール | チモプトールXE リズモンTG |
| カルテオロール | ミケランLA | |
| レボブノロール | ミロル | |
| 1日2回 | ||
| プロスタグランジン関連薬 | ウノプロストン | レスキュラ |
| β遮断薬 | ベタキソロール | ベトプティック ベトプティックエス |
| チモロール | チモプトール | |
| カルテオロール | ミケラン | |
| αβ遮断薬 | ニプラジロール | ハイパジール |
| α1受容体選択性遮断薬 | ブナゾシン | デタントール |
| 交感神経刺激薬 | ジピベフリン | ピバレフリン |
| 炭酸脱水酵素阻害薬 | ブリンゾラミド | エイゾプト |
| 1日3回 | ||
| 炭酸脱水酵素阻害薬 | ドルゾラミド | トルソプト |
| 1日4回 | ||
| 副交感神経刺激薬 | ピロカルピン | サンピロ |
(3) 点眼薬の禁忌
処方された点眼薬の禁忌を各製品の添付文書にもとづきチェックする。
(4) 薬剤師に期待される服薬指導
患者説明のポイント
緑内障は白内障や網膜の疾患とは異なり、視力は後期まで維持され,視野もゆっくり欠けていくため初期には自覚症状の乏しい疾患である。「痛い」とか「見えない」という症状がないため、緑内障における点眼コンプライアンスは不良であることが知られている。
コンプライアンス不良の原因は患者が緑内障における眼圧下降の重要性、つまり点眼をきちんと行うことの重要性を理解していないことにある。そこで薬剤師からも点眼の動機づけをサポートする必要がある。ただし緑内障と診断された患者の多くはすぐに失明するというイメージを抱くので、「緑内障はきちんと点眼して治療すれば視野を維持できる」というポジティブなメッセージを与えるよう心がける(図2)。
図2 治療すれば視野障害の進行を遅くできる!! ポジティブ・メッセージ
注意すべき局所副作用
1. 角膜障害
点眼薬の長期使用や多剤併用により点状表層角膜症や角膜びらん,糸状角膜炎を起こすことがある。
β遮断薬では涙液分泌が抑制されるので,注意が必要である。
また,薬剤そのものではなく薬剤中の保存剤が原因となることもある。
最近では保存剤なしの点眼薬も開発されている(表3)。
2.色素沈着
プロスタグランジン関連薬の使用により,虹彩,眼瞼に色素沈着をきたす。眼瞼の色素沈着を防ぐため,点眼後の拭き取りや洗顔を指示する。
3.暗黒感
サンピロは縮瞳作用があるので,点眼後に暗くなること,また,近視化をもたらすので,遠方が見づらくなることも説明する。
4.アレルギー
薬剤アレルギーはどの薬剤でもあり得る。痛みやかゆみを伴う強い結膜充血や眼瞼腫脹がみられたときは受診するように勧める。
5.緑内障発作
レーザー虹彩切開術未施行の閉塞隅角緑内障では抗コリン薬や抗ヒスタミン薬のような散瞳をきたす薬物で緑内障発作を起こすことがある。市販の薬剤の中でもこれらを含むことがあるので,現在使用している薬についてよく問診する。
表3 保存剤一覧(各製品添付文書より)
| 点眼薬(商品名) | 保存剤 | 点眼回数 |
|---|---|---|
| トラバタンズ | 塩化亜鉛 | 1/日 |
| キサラタン | ベンザルコニウム塩化物 | 1/日 |
| レスキュラ | ベンザルコニウム塩化物 | 2/日 |
| チモプトール | ベンザルコニウム塩化物 | 2/日 |
| チモプトールXE | 臭化ベンゾドデシニウム | 1/日 |
| リズモンTG | ベンザルコニウム塩化物 | 1/日 |
| チマバック | なし | 2/日 |
| ミケラン | ベンザルコニウム塩化物 | 2/日 |
| ミケランLA | ベンザルコニウム塩化物 | 1/日 |
| ブロキレートPF | なし | 2/日 |
| ベトプティック | ベンザルコニウム塩化物 | 2/日 |
| ハイパジール | ベンザルコニウム塩化物 | 2/日 |
| ミロル | ベンザルコニウム塩化物 | 1〜2/日 |
| デタントール | ベンザルコニウム塩化物 | 2/日 |
| トルソプト | ベンザルコニウム塩化物 | 3/日 |
| エイゾプト | ベンザルコニウム塩化物 | 2/日 |
| ピバレフリン | ベンザルコニウム塩化物 | 1〜2/日 |
| サンピロ | パラオキシ安息香酸メチル | 3〜5/日 |
| パラオキシ安息香酸プロピル | ||
| クロロブタノール |
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